電子顕微鏡 [計測・評価技術]
電子顕微鏡
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年3月10日
電子ビームを利用した高分解能の顕微鏡、ナノテク分野の研究に欠かせない機器ですね。顕微鏡の分解能の限界は波長で決まるため、光学顕微鏡ではせいぜい100 nm程度なのに対し、電子は電圧により加速することで波長を縮められるという性質を利用し高分解能を達成しています。
電子顕微鏡は大きく分けて、試料に電子線を透過して観る透過型電子顕微鏡(TEM)と、試料上を電子線が走査して試料から出てきた電子線を観る走査型電子顕微鏡(SEM)に分かれます。両方の機能を組み合わせた走査透過型(STEM)というのもあります。
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透過型電子顕微鏡
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年3月10日
薄い試料に100 kV 〜 1000 kVの高圧で加速された電子線をあて、透過してきた電子線を蛍光板、またはCCDカメラで検出し像を観察するタイプの電子顕微鏡です。原子分解能が有り、結晶中の原子の配列を観察することができます。
TEMでは試料の像から直接的に原子配列を観察することもできますが、結像位置を変えることで電子回折像を見ることができ、電子回折図形から結晶状態を読み取ることもできます。また転位などの結晶欠陥を直接見ることもできます。TEMは結晶性の観察に適した顕微鏡です。
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走査型電子顕微鏡
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年3月10日
電子線が試料上をスキャンし、試料表面から出てきた反射電子線、もしくは二次電子を、走査と同期させて検出することで像を形成します。TEMのような原子分解能はありませんが、厚い試料やある程度立体的な試料も観察することができるのが特長です。
走査透過型電子顕微鏡
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SEMにTEMの検出器をもたせたタイプの電子顕微鏡で、SEM像もTEM像も見ることができます。TEMは鏡筒が2 m以上もあるかなり大型の装置ですが、STEMはベースがSEMなので机+冷蔵庫くらいの大きさで済み、若干手頃になります。
またTEMは収差補正の調整がかなり難しいです。アモルファスの部分の像を見ながら像が方向性をもたないように偏向コイルの調整を行うのですが、調整の見極めがかなり難しいです。(初心者は調整だけで2時間以上かかることも多いです)
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SEMはTEMを比べるとかなり簡単で、特殊な観察を行わない限り試料はステージに固定して入れるだけでよく、偏向の調整も簡単で初心者でも数 nm程度の分解能が簡単に出せます。(ただし、旧型のWフィラメントの熱電子銃タイプのものは輝度が低く調整が難しかったりします)
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電子顕微鏡は形状を観察するだけでなく、物性を評価することもできます。これは物質に電子線を照射すると、反射電子、二次電子の他にX線、光、電流などの信号を発生するので、この信号をうまく検出することにより評価が可能となります。
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ちなみに、TEMは分解能の高さや装置の大きさの割に発明が1932年と早く、像の形成原理もほぼ完全に解明されています。対してSEMは走査技術が難しかったため開発は1960年代まで遅れました。電子線の走査技術はテレビの開発により発達しました。
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年3月10日
また、SEMは像を見るだけなら簡単ですが、像の形成過程は完全には解明されていません。これは物質の電子線に対する応答と、電子の放出過程が複雑なためです。
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年3月10日
エネルギー分散型X線分析(EDX)/波長分散型X分析(WDX)
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原子は電子線が照射されると元素固有のX線(特性X線)を放出します。これをEDXもしくはWDX検出器により検出することで、元素が試料中のどの部分に分布しているかマッピングすることができます。
電子線誘起電流(EBIC)
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年3月10日
半導体に電子線を照射すると電子-正孔対が発生し、これをpn接合等により分離して取り出すと電流として検出することができます。欠陥のある部分では再結合により電流が減少するため、欠陥の位置が分かります。 pic.twitter.com/Cdr0ogkcuI
電子線吸収電流(EBAC)
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年3月10日
配線に電子線を照射するとGNDに向かって電子が流れ電流となります。断線した配線の一方を端子に繋いで電流検出すると、断線部分を境に電流値が変わります。これを利用して集積回路の故障解析をすることができます。 pic.twitter.com/xxLZXpq5WZ
カソードルミネッセンス(CL)
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年3月10日
電子線照射による発光を測定する手法です。ブラウン管テレビの蛍光体の発光もCLです。電子顕微鏡でのCL測定はナノ構造の発光部位の特定等に用いられます。
後方散乱電子回折(EBSD)
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年3月10日
平坦な結晶面に電子線を照射すると結晶面に特有の電子線回折像が現れます。結晶の組成がわかっている場合、回折像を解析することで結晶の方位を特定することができます。多結晶金属の相解析等に用いられます。 pic.twitter.com/2XWRTKGGrv
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