強く束縛された電子モデル(LCAO) [電子物性]
結晶波数という言葉、結晶の電子構造を考える際に使うのですが、とてもイメージしづらい表現だと思います。
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年7月24日
フォノン(格子振動)の波数は機械的な振動モデルで表されるのでまだ簡単なんですが、電子の波数はそういった振動とは異なるのが難しいところです。
電子のバンド構造を考えるのには、ほぼ自由な電子モデルと強く束縛された電子モデル(LCAO)の2つのアプローチがあります。電子の波数を考えるのにはLCAOの方が考えやすかったのでLCAOのアプローチで説明します。
— ヒサン@電子材料勉強中 (@Hisan_twi) 2016年7月24日
環状に原子が並んだ1次元鎖のモデルで考えます。環状で考えるのは周期境界条件を導入したのと同じになるからです。周期境界条件はよく表面の影響を取り除くためのテクニックとして使われます。環状分子とも対応させやすくなります。 pic.twitter.com/MpPUcHT4Ks
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LCAOでは、環状に並んだ原子がそれぞれ元の原子軌道の性質を有していると考えます。そして原子を並べたことで、その位置関係によって原子軌道内で振動するタイミングが関わってきます。その振動のタイミングのずれ(位相)をcで表しますと...(続く)
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(続き)画像のような関係が導かれ、最後に出てくるkが電子の波数を表します。
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n番目の原子は元の原子軌道にcのn乗の係数が掛かりますが、cの絶対値が1なので、これによって原子軌道の形は変わりません。 pic.twitter.com/JAEVPckFgV
1次元鎖全体の波動関数は、個々の波動関数を足しあわせものになります。 pic.twitter.com/8FR0WmNiJd
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隣の原子と原子軌道の位相がずれるというのはどういうことなのか? というのを水素分子の分子軌道で考えてみます。(水素分子は環状ではないですが、それとは関係なく適用できます)
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水素分子の分子軌道は、それぞれの原子軌道の足し算および引き算で表されました。これは原子の数がN=2のときに隣の原子との位相差が0またはπ/Lずれているということに相当します。これにより結晶の場合と分子の場合の対応付けができます。 pic.twitter.com/z0lChtNSEh
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振動のタイミングがずれるというのは画像のような重りをばねで結んだモデルでイメージすると対応が取れます。 pic.twitter.com/rf5NuOp5N4
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LCAOを考えたとき、波動関数はどうなっているのか? 波動関数は複素関数なのでグラフでは表しづらいので、波動関数の絶対値の2乗である電子の存在確率密度(電子雲)と位相で表してみます。例としてN=6で考えますと、k=0,±(1/3)π/L,±(2/3)π/L,π/Lが取れます。
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k=-π/Lもとれますが、π/Lと-π/Lは同じ意味になります(exp(iπ)=exp(-iπ)のため)。また、k=+(1/3)π/Lと-(1/3)π/L、k=+(2/3)π/Lと-(2/3)π/Lの逆符号の組は位相の進み方が逆方向になるだけで形が変わらないので負の方は省略します
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N=6の場合の1次元鎖をLCAOでs軌道を計算したときの電子雲です。色が位相を表します。形の変化は分かりづらいのですが、k=π/Lで原子同士の間に電子の存在確率が0の節ができていることに注目 pic.twitter.com/Tdfayg3wDf
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こちらのグラフでは同じくN-6の場合を縦軸に電子の存在確率密度をとって表しています。波数kがπに近くなるほど原子同士の間の電子の存在確率が減り、原子核の位置に確率密度が集中します。 pic.twitter.com/46TDClkfQi
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そして電子の存在確率密度の平均値がエネルギーに対応し、グラフにすると画像のようになります。kの値はとびとびですが、原子の数Nを無限大に大きくするとkは連続と見なせます。 pic.twitter.com/gCCkbzPNsL
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αは元の原子軌道によるエネルギー、 βは原子間の軌道の重なりによるエネルギーを表します。
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言い忘れ:このほぼ連続したエネルギーの一群、これがいわゆるエネルギーバンドです。
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N=6の場合、-π/Lからπ/Lまでの間を6等分した線の位置に対応する点(赤点で示した点)の位置のエネルギー準位をとります。画像では赤点が7つありますが、-π/Lとπ/Lは等価なのでとれる準位は6つです。 pic.twitter.com/Kz3BRuIsqN
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